商標登録の区分【第35類】の注意点

商標登録の区分【第35類】の注意点

商標登録を申請をする際、区分を指定しないといけないらしいけど、どの区分を選べばいいのか分からない、という方も多いのではないでしょうか?
この記事では、商標登録の区分のうち、第35類(2022年時点)の役務を指定する際の注意点について、さっくり説明したいと思います。

目次

商標登録の区分【第35類】の役務を指定する際に特有の注意点

商標登録の区分【第35類】は、主に『広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』の区分でした。

商標登録の区分【第35類】の役務を指定する際には、特に、以下の点に注意しましょう!

商標登録の区分と商品・役務の関係は適切か?

第35類以外の役務を第35類で指定すると不明確だという拒絶理由を受けてしまいます。
また、指定区分や商品・役務が実際に商標を使用するものと異なる場合、不使用取消のリスクも発生します。
例えば、以下のような役務については注意が必要です。

小売等役務と取扱商品

商品とその商品の小売等役務に対して、同一・類似の商標が使用された場合は、類似するものとされているため、35類を指定した小売等役務の商標を出願すれば、個別の商品区分を指定した商標を出願する必要はないように思われる方もいるかもしれません。

しかしながら、商品の販売元を示す商標は【商品商標】であり、その商品販売に付随するサービス活動(商品展示、接客サービス、カタログを通じた商品の選択の工夫といった)の提供元を示す商標は【小売等役務商標】とされています。

このため、商品の販売元を示す商標として使用する場合は、35類の小売等役務だけでなく、各商品に対応する区分も指定する必要があると考えらえます。

【商品商標】
商品の生産及び販売を行う事業者等が、自身の商品、あるいは商品に付ける値札や折込みチラシ等に付し、それらの商品の出所を表示する商標

【小売等役務商標】
小売業者等が、店舗設計や商品展示、接客サービス、カタログを通じた商品の選択の工夫といったサービス活動の出所を表示するべく、看板、店員の制服、レジ袋、ショッピングカート等に表示する商標

小売等役務を指定役務として登録した場合に、例えば、自分ではネットショップ等の小売店舗等を運営しておらず、専ら商品商標としてのみに使用しているときは、小売等役務の商標として使用していない、つまり、不使用取消審判の対象となる可能性がありますので、注意が必要です。

ニュースの提供

ニュースの提供の意図によって区分が異なります。要求された記事をクリッピングして提供する意図であれば第35類、報道機関等の需要に応えてニュースを配信する意図であれば第38類、報道(ニュース)番組を制作する意図であれば第41類に該当するとされています。

例)
第35類「新聞記事情報の提供」、「ニュースクリッピングサービス」
第38類「ニュース報道機関へのニュースの供給」
第41類「放送番組の制作」

情報の提供

「情報の提供」の役務は、原則として、情報の内容に対応する役務と同じ区分に該当するとされています。

例)
第35類「商品の販売に関する情報の提供」「消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供」「ウェブサイト経由による事業に関する情報の提供」など
第36類「保険情報の提供」など
第37類「建設工事に関する情報の提供」など
第44類「医療情報の提供」など

なお、第35類「商品の販売に関する情報の提供」は、「商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供する役務」であって、企業に対し、「商品の販売実績に関する情報、商品販売に係る統計分析に関する情報などを提供」するものと解されています(平成23年12月20日 最高裁 平成21(行ヒ)217)。

これに対して、消費者向けに商品を紹介するような情報の提供の役務としては、第35類「消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供」がありますので、同じ35類の中でも、企業向けの情報提供か、消費者向けの情報提供かによって、異なる役務を指定する必要がある点に注意が必要です。

イベントの開催

「イベントの開催」に関する役務は、その目的により、異なる区分に分類されます。

例)
第35類「広告イベントの運営」
第41類「文化のためのイベントの運営,娯楽イベントの運営」

助言・指導

「助言・指導」の役務は、原則として、助言・指導の内容に対応する役務と同じ区分に分類されます。

例)
第35類「事業の管理及び組織に関する指導及び助言」
第36類「債務に関する指導及び助言」
第42類「インターネットセキュリティに関する指導及び助言」
第44類「健康管理に関する指導及び助言」

派遣業

派遣業の業務内容に関する役務のすべてを一つの類で指定することはできず、派遣された人が派遣先で行う仕事の内容ごとに役務の権利を取得する必要があるとされています。役務の表示は「派遣による〇〇」「人材派遣による〇〇」と記載します。

例)
第35類 人材派遣による市場調査の代行
第37類 派遣による電気工事
第41類 人材派遣によるスポーツの教授
第44類 派遣によるあん摩・マッサージ及び指圧
第45類 派遣による家事代行

施設の提供

「施設の提供」の役務は、施設の性質・用途によって異なる区分に分類されます。

例)
第41類「運動施設の提供」、「娯楽施設の提供」
第43類「高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。)」
第44類「入浴施設の提供」
第45類「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」

第35類以外の区分も追加しておかなくて大丈夫か?

例えば、「助言・指導」の役務であれば、上述のとおり、助言・指導の内容に対応する役務と同じ区分に分かれていますので、「事業の管理及び組織に関する指導及び助言」と「インターネットセキュリティに関する指導及び助言」の両方に使用する商標であれば、第35類「事業の管理及び組織に関する指導及び助言」だけでなく、第41類「インターネットセキュリティに関する指導及び助言」を含めた2区分を指定して出願するのがよいでしょう。

商標登録の区分【第35類】の役務を指定する際の一般的な注意点

第35類の役務を指定する際には、以下のような点にも注意しましょう!

商品や役務の指定に不足はないか?

現時点で商標を使用していない商品や役務についても、近い将来、使用する予定がある場合には、指定することができます。
一方で、一旦、特許庁へ商標出願の手続きを行った後で、その商標出願に商品や役務の指定を追加することはできませんので、商標を使用する商品や役務を全て指定しているか、特許庁へ願書を提出する前に、十分確認しましょう。

商品や役務の記載は適切か?

区分が正しくても、商品や役務の記載の仕方が不明確だと拒絶される場合があります。上述のとおり、願書に商品・役務を記載する場合には、特許庁の「類似商品・役務審査基準(第35類)」に掲載されている商品・役務の名称を記載するのがよいでしょう。

必要以上に多くの商品や役務を選択していないか?

一方で、必要以上に多数の商品や役務を指定すると、以下のようなリスクが発生しますので、ご注意下さい。

追加の手続きが発生するリスク

指定した商品・役務を類似する商品・役務別にグループ分けしたときに、その類似のグループが所定の数を超えると、特許庁に対して、商標の使用意思を示す書類の提出が必要となり、追加の手続きが発生してしまいます。

他者商標との関係で拒絶を受ける可能性が高まるリスク

例えば、他者が同一・類似の商品・役務に対して、同一・類似の商標を先に商標登録しているような場合には、自分の出願した商標が拒絶されてしまう可能性があります。必要以上に数多くの商品・役務を指定した場合、他者の登録商標等との関係で拒絶されてしまう可能性が高くなるかもしれません。

不使用取消のリスク

指定した商品や役務に対して商標を使用していない状態が3年以上続くと、不使用取消審判を請求された場合、商標登録が取り消されてしまう可能性が発生します。

まとめ

以上、商標登録の区分のうち、第35類についての説明でした。第35類は主に『広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』の区分ですが、役務を指定する際は、色々と注意する必要がありそうですね。

色々と調べたりしたけど、やっぱりよく分からないという場合には、特許庁への手続きも含めて、弁理士に手続きの代理を依頼してみるのもよいかもしれませんね。

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